いつ、どんな考え方で、何を判断材料にして、何を決めればよいのか?
大学受験を見据えた、高校3年間の理想的なタイムテーブル
まずは、「理想的なタイムスケジュール」を組んでみましょう。
意識しておかねばならない時期やアクションは、おおむね以下のようになります。
【大学受験を見据えたスケジュール】
※ 表を右にスライドすることで続きが表示されます
学年 |
テーマ |
時期 |
その時期のアクション |
高校1年生 |
文理選択 |
入学 |
学校生活・生活リズムを把握し、学習計画を修正する |
秋以降 |
「文理選択」 |
高校2年生 |
科目選択 |
6・7月ごろ |
HRなどで受験科目に対する意識づけが始まる |
夏休み |
大学のオープンキャンパスなどに参加し、 気になる学びやキャンパスの雰囲気などを感じてみる |
2学期 |
志望校別(受験科目別)クラス編成に移行 |
3年生0(ゼロ)学期 |
3学期 |
志望校・学部決定時期 |
高校3年生 |
受験科目の仕上げ |
夏休みまで |
受験科目の基礎学習は修了 |
志望校の 出題傾向を踏まえた 実践演習 |
夏休み |
気になる大学のオープンキャンパスなどに参加し、 「受験に活かせる入試情報」などを収集する |
夏休み以降 |
演習問題中心の実践対策 |
受験時期スタート |
9月 |
共通テスト出願 |
10月ごろ |
学校推薦型選抜・総合型選抜入試 |
1月 |
共通テスト |
2月前半 |
私立大学一般入試 |
2月後半 |
国公立大学2次試験 |
※ 表を右にスライドすることで続きが表示されます
高1のテーマは「文理選択」
高校1年生で、一番意識しておかねばならないことは「文理選択」です。
近年は、公立高校でも2年生・3年生になるにしたがって、いわゆる「国公立文系」「国公立理系」「私立文系」「私立理系」といった志望校や学部(受験科目)を基準にクラス分けが行われます。
自分は将来何になりたいのか?高校1年生の段階では、具体的に思い描けている生徒はまだまだ全体的には多くはいないでしょう。そんな状態で文系か理系かを選ばせるのは、いささか酷な話です。しかし、いずれその時は来ます。
この段階では、文系・理系を選ぶというよりも、世の中にはどんな業種や職業があるのか?自分はどんなことに興味を覚えるのか?
そうした「自分の視野を広げる」「自分自身の興味のベクトルに気づく」行事やイベントにはまず参加してみる(行動してみる)ことをお薦めします。この経験やエピソードが、将来推薦入試での自己PRや志望理由につながることがあるかもしれません。チャンスは、意識や行動から生まれてきます。
高2のテーマは「科目選択」
高校2年生になると、「科目選択」の時期がやってきます。1学期の6~7月ごろには、HRなどの場で意識づけが始まり、文系・理系で時間割も変わってきます。さらには、12月ごろまでには、受験に向けた追い込みのための志望校(受験科目)に応じたクラス分けが行われます。
ここで大きなフィルターとなるのが、「数Ⅲ」を挙げてもよいでしょう。医・歯・薬系、理・工学系などで数Ⅲが受験科目に必要なら、必然的にそれを選ばねばなりません。一方、多くの文系学部では数Ⅲが求められることはありません。
多くの受験生は、第一志望に「国公立大学」、併願校として「私立大学」の、「国私併願」で受験するケースがほとんどですから、少なくとも3年生の夏前までは、共通テスト受験を意識した「志望校の受験科目に応じた6教科8科目をまんべんなくがむしゃらに勉強する」ようにしましょう。
この時期に「私立専願の3科目」に絞り切るのは時期尚早です。もちろん、どうしてもいきたい大学・学部が決まっているならその選択もなくはありませんが、さまざまな選択肢を持っておくということは意識しておきましょう。
高2・冬休み=「3年生0(ゼロ)学期」が、志望校選び決断の時
志望校・学部選びに理想的な時期は、「高2の冬休みまで」を目安としてください。近年は、進学を意識した公立校なら、先生方も授業時間をやりくりして、2年3学期までには3年分の授業を一通り終えられるように時間割を工夫されています。
3年1学期からは、いよいよ受験モードに入っていきます。その前の2年生3学期は、言うならば「3年生0(ゼロ)学期」です。
この時期までに、ある程度志望校の目星がついている=受験科目に応じた学習量を担保できる学習計画を組むことができるなら、仮にその後、志望校を変更したい事態が起こっても(多少の受験科目変更が起こっても)、比較的柔軟に対応できる時間的余裕があります。
高3夏休みまでは、受験科目の基礎固め
3年生になって「新たに習う科目」は、先述した数Ⅲや新たに共通テストに追加された「情報Ⅰ」、社会の「公民」などに限られています。また、歴史などの1年から継続して習っている文系科目も、1学期では出題範囲を一通り終えられるように時間割りが組まれています。
その意味では、この時期は、比較的「自分仕様の勉強時間を確保できる時期」です。3年の夏休みまでは、自分が志望する大学の「受験科目の基礎固め」と意識してください。
高3夏休み以降は、志望校に合わせた実戦演習
受験直前期となる3年生夏休み以降は、志望校の出題傾向に沿った演習問題を解く実戦的な対策が中心になります。よく聞く「秋になると成績が急激に伸びる現役生が多い」理由は、夏までにしっかり地力を養ってきた現役生が、この時期にそうした対策を講じているからです。
この時期、もう一つ大切なアクションがあります。それが9月の「共通テスト出願」です。これは、受験日までの残り約5カ月間をどう対策していくのかを決める大きな決断になります。この「共通テスト出願」をどう考えるかについては、後段であらためて説明します。
志望校・学部を絞り込むお手本にしたい考え方・セオリーとは?
なぜ志望校・学部を決められないのか?
ではここであらためて「志望校の決め方・選び方」に話を戻します。
そもそも、なぜ、志望校・学部を決めあぐねてしまうのでしょうか?長年、受験を控えた高校生を間近に見てきた経験に基づくと、その理由は大きく二つあります。
- ①なぜいまこの時期に人生を決めなければならないのか?という「漠然とした不安や迷い」が邪魔して決められない
- ②そもそも、この先自分が学んでみたいことや就きたい仕事などを知らない、出会えていない
①を「いま流」にいえば、「『タイパ』に合わない」のです。すぐに答えの出ないことに時間を割くことこそ時間のムダに思えてしまい、つい先送りしてしまう。そんな感覚でしょうか?
もっとも「まだ何者でもない高校生」に、いきなりそんなことを決めろと迫る方が無理な話でもあります。実は、きちんと②のケアをしてあげることの方が大切です。
②についても、これも「ごもっともな話」です。将来就きたい仕事を明確にイメージしている高校生がどれほどいるでしょうか。大人の立場から考えてみると、普段の暮らしの中で、ふとした時に感じる疑問や興味などを聞いてあげる。気になるニュースや社会的な課題などについて話し合ってみる。本人が言葉にして自覚できる機会を作ってあげる。そうして少しずつ興味のアンテナが受信できる範囲や角度を広げてあげること、その感度を上げてあげることが、大切なスタンスであるような気がします。
オープンキャンパスをフル活用
その視点からみて、ぜひ活用してほしいのが「夏休みのオープンキャンパス」です。
高校生の目から見て、やはり大学は「自由かつアカデミックな場」です。高校とはまるで異なる建物、授業や研究、サークルなどの大学生活は、高校生の目には刺激的に映ります。その刺激にインスパイアされることで、興味が芽吹くことも少なくありません。
≪ 1年生の夏休み ≫
総合大学のオープンキャンパスなどに参加してみるのがおすすめです。さまざまな学びの分野に幅広く触れることができます。極端な話、専門学校のオープンキャンパスでも構いません。
≪ 2年生の夏休み ≫
気になる大学のオープンキャンパスに参加してみましょう。なぜその大学が気になっているのか、どんな学びや研究をしているのか。キャンパスを歩く先輩や学食などの雰囲気も感じてみるとよいでしょう。
そしてその中から志望校が見つかるなら、そのキャンパス体験は今後の受験勉強のモチベーションにもなります。
≪ 3年生の夏休み ≫
いよいよ志望する大学のオープンキャンパスに参加してください。ここでやっていただきたいのが、大学独自の受験方法や採点方法など、「受験で得する・有利になる入試情報」の収集です。
こうしたパンフレットには詳しく載っていない情報を持っている・いないでは、受験対策の打ち手にも大きな差が出ます。
また、「志望大学は遠方なので、現地には行けない」という生徒のために、大学もオンライン説明会やショート動画をはじめ、SNS等での情報発信も行っています。それらも積極的に活用し、情報収集してください。
学びたいことや行きたい大学に出会うためにやっておくべきこと
1.将来を描く
ぼんやりとでもいいので、普段から意識的に「自分の興味と将来のキャリアをイメージしてみる」時間を作ってみましょう。もちろん、すぐに決める必要などありません。あれもいいかも?自分がこの仕事に就いたらどんな生活になるのかな?それぐらいの「軽い想像」でかまいません。
近年、中学・高校では、科目縦割りの授業とは異なる「総合学習」の時間を使って、SDGsなどを題材とした社会課題解決型授業も増えています。こうした経験のなかで、とりわけ興味を感じたり、疑問や憤りを感じたりしたことを思い起こしてみることも、「自分への気づき」のきっかけになります。
2.大学の学習・研究内容などを調べる
実際に、大学の細かな情報に触れてみましょう。全国には800を超える大学があります。そこには、たくさんの学部・学科があり、さまざまな研究や開発が行われています。同じ学部・学科名であっても、もう一段掘り下げて調べてみると、大学ごとに学ぶ内容はまるで違っていたりもします。
たとえば、最近人気の高い「情報学部」。統計学的な視点から経済や社会動向をシミュレーションする「データサイエンス」的学びもあれば、ゲーム制作に活かされる3DCGなどの「エンターテインメント」的な学び、さらにはAIなどを活用したシステム開発などの学びもあります。
これらの、授業や独創的な研究をしている教授、共同研究開発している企業などを調べていくだけでも、これまで知らなかった「学び」に出会えるチャンスは広がります。
また、近年、「学部・学科ありき」で入学するのではなく、大学入学直後は幅広く総合的学び、その後自分の専門を決めて学び始める「総合課程的・教養学部的な学び方」ができるカリキュラムを採用している大学もあります。
3.大学の施設や、取得可能資格、就職実績などもチェック
キャンパス内の図書館や自習スペースなどの環境・施設、オンライン授業などの機器などもチェックしてみてください。日常的に英会話をトレーニングできるよう、ネイティブスピーカーが常駐する専用サロンを持つ大学なども増えています。
これらの特徴をオープンキャンパスで現地見学できれば、かなりの高い精度で、各校の仕組み・雰囲気の違いがつかめます。また、在学中に取得できる資格や卒業後の就職先などの進路実績もチェックしましょう。
4.経済的な優遇措置などもチェック
各大学では、独自にさまざまな奨学金制度を設けています。また、県立大学では、卒業後一定期間県内で就職することを前提に、学費の減免を行っているところもあります。こうした経済的な優遇措置についても確認しておきましょう。
気づきの機会を日常的に提供することが、塾の役割
こうした「調べる・探す作業」自体は、最初はどうしても面倒くさく感じるものです。しかし、いざ何かピンとくるものが見つかれば、探す・調べることが次第に楽しみに変わってきます。
私はその「機会づくり」は、塾が果たすべき大きな役割の一つだと思っています。そしてさらに大切なのは、「私たちが調べてあげた情報を渡す」のではなく、「調べ方そのものを教える」こと。
よく生徒と一緒に、「おもしろそうな学び」探しをしています。たとえば検索サイトに「カメムシ 大学」と入れて検索してみる。本当にあるかどうか疑わしいけれど、探せばやっぱり出てきます。半ばゲーム感覚ですが、そうして遊ぶように調べているうちに、思わぬ学びに出会えることもあります。
私たちも「通学可能圏内の大学」ならともかく、全国に800以上もある大学すべてに精通することはできません。自分の興味あるものが学べる大学探しは、まるで「旅」と同じです。
<目的地>に向かう途中で、偶然見つけた情報、思いもしなかった情報に出会うという経験は進路探しの糧となることもあります。大切なのは、調べる・探す作業を一緒に体験しながら、大学選びのための「調べ方そのものを教える」ことです。
避けて通れない受験対策、併願・専願どう考える?
受験科目や科目数、出願形式(傾向)・難易度が入試でまったく異なる
私は個人的には、「どうしてもいきたい大学があるならともかく、そうでないなら早く大学生になって次のStageに上がることを優先したほうがいい」と考えています。そうすれば、この先で別の何か出会える可能性もあるからです。
としたときに、志望校を決める際にはいくつか選択肢を持ちながら受験できる準備をした方がよいと考えています。それを考える際に重要になるのが受験科目です。大学・学部によって、科目数も難易度も求められる力もまったく変わります。
- ①国公立共通テスト(おもに6教科8科目)
→どの教科(科目)においても得点できる総合力が問われる
- ②私立一般入試(おもに3科目)
→科目が少ないぶん難易度は高く「特殊訓練(出題形式になれる)」で身につけた突破力が問われる
- ③私立推薦・選抜型入試(おもに面接・小論文など)
→教科学習とは異なる特別な対策が必要
私たち塾の責任者の仕事は、この「生徒が求めること」と、「大学・学部の難易度や入試方法」などを両にらみしながら、少しでもベター・ベストな対策を考えることです。
受験対策を考える中で知っておきたい学校推薦型選抜・総合型選抜入試
現在、私立大学の入学者の約6割は、この学校推薦型選抜(指定校制・公募制)もしくは総合型選抜からの入学者です。この試験は通常の教科学習とは異なる対策が必要です。
学校推薦型選抜・総合型選抜での受験を基本として考えていたが途中で諦めた、あるいは選抜試験に落ちた場合、そのリカバーは簡単ではありません。試験は11月ごろに試験が行われ、12月には合否発表があります。
とすると、想定外のことが起こってしまうと、次の機会、共通テストや私大一般入試まではわずか1カ月程度しかないことになってしまいます。この場合、一般的には学校推薦型選抜・総合型選抜と比べて、一般入試での試験科目のほうが1科目多い場合があります。学校推薦型選抜・総合型選抜での受験を検討する際には、併せて一般入試に備えた対策も講じておく方がよいでしょう。
[関連ページ]大学推薦入試(学校推薦型選抜/総合型選抜)とは?複雑になった仕組みと種類・特徴を解説!
[関連ページ]推薦入試対策講座(基本コース)
私立専願の主流は「受験科目3科目」だが、難関校は油断禁物
「3科目だけなら何とかなるのでは…」。私立受験を考える生徒やその保護者の方は、よくそう口にされます。
ところが、首都圏なら「早(稲田)・慶(應)・上(智)・理(東京理科)」、関西圏なら同志社レベルの難関と呼ばれる私立大学の一般入試は一筋縄ではいかないものと思ってください。
たとえば、横浜国立大学や一橋大学に合格できるレベルの生徒でも、早稲田や慶應は落ちることだってあります。神戸大学や大阪大学に合格できるレベルの生徒でも同志社は厳しい結果になることも。そういった事例はいくつもあります。
その理由は、科目を絞った分、難易度は桁違いに上がっているからです。たとえば、必要な英語の語彙数だけ見ても、共通テストの倍以上が必要とする見解もあります。つまり、こうした大学の入試問題を解くには「特殊訓練」が必要なのです。
受験に必要な科目数だけで、負担が減るという安易な考えだけで、難関私立に絞っていくのは避けたいところです。しっかりと情報収集(習った範囲で出題された問題を解いてみる、塾や学校の進路相談で聞いてみる等)を行った上で、歩んでいきましょう。
もう間に合わない?高3・4月から始めるならどうすればよいのか?
これらのさまざまな受験事情が分かってくると、「志望校・学部決定は高校2年生の冬休みまで」とする理由も見えてきます。つまり「リカバーできる選択肢も残しながら受験できる準備を進めるには、一定以上の学習時間が必要」なのです。
では、そこまでに決められなかった人は諦めざるを得ないのか?と言えば、それもまた早計です。高校3年生の4月からだとしても、まだ残り9カ月もの時間はあるのですから。対策がまるでないわけではありません。
以下、その考え方をまとめています。
【高3・4月から始める受験対策スケジュール】
※ここでの「私立専願」は入試制度としてではなく、私立大学のみの受験を想定しています。
この際に、必ず視野に入れておいていただきたいのが、9月の共通テスト出願です。「出願する」なら「国公立大学を受験する」、もしくは「私立大学受験に共通テストを利用する」可能性があるということになります。となれば、6教科8科目、もしくは受験に必要な科目(数)をにらんだ対策が必要です。
9月の共通テスト出願に向けてやっておくべきこと
現実的には、受験生には「国私併願」で受験するケースも多いので、いったんは「出願する」のも受験対策の1つと言える場合があります。しかし、ただ漫然とその出願の時期を迎えるのではなく、その前にやるべき策を講じてから出願してほしいのです。
やっていただきたいことは、「9月までにどれだけきちんと勉強する努力ができたか?」を振り返って欲しいのです。私は、そのために夏場に行われる「共通テスト模試」を受けるように指導しています。
これも単に「6教科8科目で合計何点取れたか、判定はどうか」を知ること自体よりも、「模試に向かって立てた自分なりの努力目標をどれだけ達成できたか」を見たいのです。
たとえば、英語なら「毎日10語ずつ暗記する」。仮に本番まで残り9カ月(約270日)あれば2700語を覚えられる計算になります。あるいは数学なら単元が明確に区切れますから「ベクトルと関数を鍛え直す」。
それを実際に模試までにやり切れるかどうか。その様子を見れば、それ以降の延長線上でどこまで巻き返せるのか、伸びしろはどの程度あるのかをシミュレーションすることができます。
模試の結果次第では、苦手科目や配点の低い科目は最低限ここまでやり切る、得意科目や配点の高い科目はここまで伸ばすといった、科目間でのメリハリをつけた勉強法を考えることもできます。
あるいは、6教科8科目を追い続けるより早めに私立3教科にシフトし直し、難易度を考慮した併願作戦を練り直すという判断もあるかもしません。
残り9カ月の時間の中で、そのほぼ中間地点となる9月の共通テスト出願に向けて、「実験と検証」を試みる。そうした時間軸を設定し、志望校決定と受験戦術を両にらみしながら作戦を立てることが大切です。