何が違う?どっちを選ぶ?
日本の国際系大学と海外大学の違い、メリット・デメリットと選び方

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「グローバル系学部の新設」や「グローバル人材育成」など、大学周辺で「グローバル」という言葉が謳われ始めてから、ずいぶんと長い年月が経ちました。 では、いまその大学の「グローバル進学」の動向は、どのようになっているのでしょうか?日本の国際系大学・学部や、海外大学への進学事情に詳しいプロにその現状を聞きました。
この記事のポイント

【最新動向】広がる「グローバル進学」の選択肢とその背景

日本でいわゆる「国際系大学・学部」が現れ始めたのは、1980年代後半です。世界の冷戦終結や国際化の進展を背景に、
- 立命館大学 国際関係学部(1988年)
- 神戸大学 国際文化学部(1992年)
- 関西学院大学 総合政策学部(1995年)
などが誕生し、国際関係学部ブームが起こりました。
そのなかで、一つの転換点となったのは2000年に開学した立命館アジア太平洋大学(APU)です。大分県別府市中心部からバスで約30分、別府湾を見下ろす山上にキャンパスを構え、世界の70カ国以上から学生が集まってくる国際大学を日本に作ったのです。
留学生比率が極めて高く、「小さな地球村」を標榜するAPUでは、英語での授業も行われ、英語授業のみでも卒業単位を取得することもできました。また、留学生と一緒に寮生活を送ることもでき、学習だけではなく日常生活もともにすることで、互いの価値観や文化に対する理解・共感・尊敬の心も育む仕組みが設けられていました。
その後、後を追うように、
- 国際教養大学(AIU/2004年)
- 早稲田大学国際教養学部(SILS/2004年)
などが登場し、「英語で学ぶ」「留学生と学ぶ」という、新しい国際系大学・学部のロールモデルが作られていきました。
高校卒業後に「海外大学」に進学するケースが増えている
一方で、ここ10年ほどの間で、高校卒業後に直接海外の大学へ進学する生徒も増えてきています。昔は留学情報を得るのも一苦労でしたが、今では海外の大学についても、日本で公式サイトから簡単に情報が手に入ります。
また、国際バカロレア(IB)<※1>や、A-Level<※2>などの世界標準の進学ルートが整備されてきたことなども、進学者が増えた大きな理由の一つです。
さらには、欧米圏だけでなく、オーストラリア、マレーシアやシンガポールなど、日本から比較的距離が近い圏内にも新たな進学先が登場したことにより、高校卒業後に直接海外大学へ進学するケースが着実に増えています。
<※1>国際バカロレア(IB)
スイス・ジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラム。自ら探究し、論理的な思考力を養うカリキュラムで、修了すると世界で通用する大学入学資格が得られる。
<※2>A-Level
イギリスを中心に世界中で認められている高校卒業資格・大学入学資格。16~19歳の学生を対象とし、自分が専攻したい少数科目(通常3~4科目)を2年間かけて深く学ぶ。
日本の「国際系大学・学部」と「海外大学」の大まかな違い
「理想と現実のギャップを生まない」ためには、日本の「国際系大学・学部」と「海外大学」は何が違うのか? を、大まかに理解しておくことが大切です。
【日本の「国際系大学・学部」と「海外大学」の違い】
日本の国際系大学・学部 | 海外大学 | |
学費 | 比較的安い 150~200万円程度/年 | 高額 アメリカなら1000万円/年を越えるケースも |
安全性 | 高い | 国・地域差大 |
サポート | 手厚い | 自立前提 |
授業 | 講義+演習 | ディスカッション中心 |
課題 | 試験型が多い | 大量のレポート |
英語環境 | 部分英語 | 完全英語 |
就活 | 日本型に強い | 海外型に強い |
日本の国際系大学・学部の現状|国内にいながら英語で専門分野を学ぶ
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現在の先進的な国際系大学・学部の学び方や学ぶ内容は、かつてのような「日本人学生が集まって国際関係を論じる場」ではなく、あるいは「英語を学ぶ場」でもなく、「英語で専門分野を学ぶ場」 へと進化しています。
下記に代表的な大学・学部を挙げておきます。これらの大学・学部には世界各国からの留学生が在籍し、日本国内でありながら「多文化環境」が整った環境で、英語による授業が行われています。
◆日本の代表的な国際系大学・学部
・国際教養大学(AIU)
→ 全授業英語+全寮制+1年間の留学必須
・早稲田大学 国際教養学部(SILS)
→ 留学生比率が高く、授業の約7割程度が英語
・立命館アジア太平洋大学(APU)
→ 学生の約半数が留学生で、日英2言語授業
・上智大学 国際教養学部(FLA)
→すべての授業を英語で行い、リベラルアーツ教育を展開
・立命館大学 グローバル教養学部(GLA)
→オーストラリア国立大学(ANU)とのデュアル・ディグリー・プログラム
日本の国際系大学・学部に進学するメリット・デメリット
メリット(1) 費用負担が軽い
まず何よりも大きなメリットは、海外の大学に進学するよりも、圧倒的に費用負担が少なく済みます。また留学制度が組み込まれている大学が多いのですが、その留学先の授業料を追加で払う必要はなく、日本の大学に払う学費だけで留学できるケースも多く見られます(渡航費・滞在費等は別)。
メリット(2) 段階的に国際環境に慣れることができる
海外の大学に進学する場合には、仮に英語力に多少の自信はあったとしても、本当に大学の授業についていけるかどうかの不安はぬぐえません。また、友達や知り合いもいないまったく異文化環境で暮らすとなると、相応の緊張も感じます。その点、国内であれば、そこまでの急激な環境変化はなく、不安や孤独に悩まされることはありません。
また、留学や就職についても大学の手厚いサポートを受けることができ、段階的に国際環境に馴染んでいくことができます。
メリット(3)日本での就職活動に強い
大学を卒業した後に日本の企業に就職したいと考えるなら、やはり、その学部だけに限らず、日本企業へのパイプが太く就職実績も高い国内の大学の方が有利でしょう。また、大学で設定する留学時期も、日本の就職活動のスケジュールを意識・考慮したものが多く、そうした点でもストレスなく就職活動を行えます。
デメリット(1)「多様性」は海外の大学には及ばない
いかに学部生の半数近くの留学生がいたとしても、やはり日本は日本。多様性の面では海外の大学には及びません。たとえばオーストラリアやシンガポールなどは、国の成り立ち自体が多民族国家ですから、社会そのものが多文化共生社会です。しかもこれらの国の国立大学では、いわば「国の施策」として、他国からの留学生を集めていたりもしますから、そうしたダイナミックな多様性・ダイバーシティに比べると、国内の大学は見劣りするかもしれません。
また、海外の大学生活に比べると、どうしても学生コミュニティは日本人中心になりがちです。たしかに英語力は身につくかもしれませんが、ともすれば、「英語を話せる日本人」で止まってしまう危険も潜んでいます。
デメリット(2)入学時の学生の英語力格差が大きい
日本の国際系大学・学部の場合、入学時の学生の英語力のばらつきが大きいのも懸念点の一つです。ばらつく原因は、帰国子女や国際バカロレア生(IB生)などの「聞く・話す」力にも長けた英語力を持つ学生と、「読む・書く」重視の一般受験で合格した学生が混在しているからです。そのため、授業での議論やディベートなどが思うように進まないと言った状態が生まれてしまいます。
デメリット(3)海外の大学ほど「議論する時間が多くない」場合も
もとより、日本の大学と海外の大学では、授業の組み立て方が大きく異なっています。海外の大学の「プレゼン・ディベート・ディスカッション中心授業」に比べると、日本の場合、「講義+演習」のところが多く、その点では物足りなさを感じる場合があるかもしれません。
日本の国際系大学・学部に向いている人の特徴と入学後のありがちな後悔
これまで私が指導した生徒たちから耳にしたことなどをもとに、「向いている人」「ありがちな後悔」をまとめておきます。
日本の国際系大学・学部に向いていると思われる人
- 費用を抑えたい
- 日本で就職を考えている
- 孤独耐性はそれほど強くはない
- 急激な変化や強烈な刺激を求めるよりも、段階的に国際経験を積みたい
日本の国際系大学・学部でのありがち後悔
- 思ったほど英語漬けではなかった
- 学生の意識差・学力差が生まれ、一体感に欠ける
海外大学の実態|世界標準の学びで自分をアップデートする
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高校生が日本の大学ではなく「海外大学進学」を希望する主な理由
私が進路指導部長兼教務を務める通信制高校・ワオ高等学校では、近年、海外の大学へ進学する生徒が増えています。その生徒たちが海外の大学に進学する理由は、
- 日本の画一的な大学の授業スタイルには興味が持てない
- 「英語を学ぶ」のではなく、興味のある分野について「英語で学びたい」
- 海外の異文化の環境下で暮らし、いろんな国の学生と一緒に自由な学びを経験するなかで、世界的な視野を持ちたい
といった理由が多いように見受けられます。
学費・生活費が安い!近年マレーシアの大学進学の人気が急上昇している理由
海外の大学の進学先で、近年非常に人気が高まっている国の選択肢の一つが、マレーシアです。モナシュ大学マレーシア校(オーストラリアの名門・モナシュ大学の分校)やノッティンガム大学マレーシア校(イギリスのトップ大学の一つ・ノッティンガム大学の分校)、マレーシア発祥では、国内トップクラスの私立大学・テイラーズ大学やサンウェイ大学などが、特に人気があります。
人気の一番の理由は、欧米圏の大学に比べて、学費と生活費が安いことがあげられます。ここ数年で円安が急激に進んだこともあり、たとえばアメリカの大学に進学しようとすると、1年間で1000万円以上かかることも珍しくはありません(1ドル≒160円で換算)。それに対してマレーシアの一般的な私立大学の学費は60万円~150万円程度です。また、日本からの距離が比較的近い点も、心理的障壁を下げている理由だと思われます。
そして、マレーシアの大学入試は、高校の成績(評定平均)と英語力証明(IELTSやTOEFLなど)を用いた書類選考のみで合否が決まります。
日本の共通テストや一般試験などの学力試験、あるいは総合型選抜試験のような複雑な試験制度はなく、シンプルで効率的な試験です。それもマレーシアが人気の理由の一つです。
カナダ留学経験者が語る!「読める・書ける」と「聞ける・話せる」英語力の違いと対策
私は立命館大学卒業で、在学中には1年間カナダに留学しました。その時の経験を少しお話します。
まず、留学当初は授業の議論にはまったく参加できませんでした。当時は、まだインターネットが普及しておらず、生の英語に触れる機会が限られ「聞ける・話せる英語力」が足りなかったからです。「読める・書ける英語力」は人並み以上にはあったと思います。しかし、それができても「聞ける・話せる」わけではありません。
海外の大学では、「授業中に発言しない学生」は、周囲からは「何でこの教室にいるの?」と不思議なそうな顔で見られます。私は必死で話せるまでの訓練をして辛うじて踏ん張れましたが、それでもかなり凹みました。
今は、インターネットで海外のニュースやドラマを見ることもできますし、安価なオンライン英会話サービスもたくさんあります。日本にいるうちに、英語学習についてはクリアしておきましょう。
海外の大学へ進学するメリット・デメリット
メリット(1) プレゼン・ディベート・ディスカッション授業中心
授業は、プレゼン・ディベート・ディスカッション型中心です。 また、書かなければならないエッセイ(特定のテーマに対して、自分の主張とその論拠を論理的に展開する学術的な小論文)も多いため、ロジカルシンキング(論理的思考力)やクリティカルシンキング(批判的思考力)が徹底的に鍛えられます。
メリット(2) 多様性に富む学習・生活環境
国籍や宗教、価値観などが異なる学生が日常的に混在するキャンパスで学べます。また、日本とはまったく異なる生活環境になるため、異文化に対する感性や受容性なども磨かれます。
メリット(3) 海外でキャリアを高めたいなら有利
堪能な語学力や異文化に対する親和力などが身につけば、日本国内の大学に比べると、国際機関や外資系企業など、海外での就職の道は開かれやすいでしょう。
デメリット(1) 日本に比べると学費・生活費が大幅にかかる
近年の急激な円安の影響も大きく、アメリカなら学費だけで1年間1000万円を超えるケースも少なくありません。
デメリット(2) 不安や孤独を抱えた生活に陥りやすい
どれだけ英語力に自信があったとしても、入学後しばらくは、授業についていくのが精いっぱいでしょう。さらには、日常の生活環境も激変します。自分から動かなければ友人もできません。不安や孤独が原因でリタイアする学生も少なくありません。
デメリット(3) 日本の就職活動とのズレ、日本企業への就職には不利に
日本の大学とは異なる入学・卒業時期や、日本企業の新卒一括採用文化などに起因し、日本国内での就職活動スケジュールとズレてしまうケースが多く、日本企業への就職を考えるなら、不利に作用することが多くあります。
海外大学に向いている人の特徴とありがちな後悔
海外大学に向いていると思われる人
- 自分から動ける
- 失敗や孤独に対する耐性は強い
- 多様性を楽しめる
- 海外キャリア志向が強い
海外大学でのありがち後悔
- 英語が得意だったはずなのに通用しない
- 授業のディスカッションで発言できない
- 経済的な不安やキャリアに対する不安
- 強い孤独感
- 日本人コミュニティに閉じこもりがちになる
日本の国際系大学・海外大学の受験対策|合格に必要な英語力と準備ロードマップ
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日本の国際系大学・学部であれ、海外大学であれ、受験を考えるなら、まずは英検準1級レベルの英語力が必要です。しかも前述の通り、「聞ける・話せる英語力」を身につけておかなければ、入学後に相当苦労します。
そのうえで、日本の国際系大学・学部と海外大学では、求められるコト・モノが多少異なります。それぞれに受験準備を整えてください。
それぞれの大学の試験については、各大学・学部のホームページなどで確認してください。
日本の国際系大学・学部で重視されるもの(例)
- 英検準1級~1級
- TOEFL/IELTS
- 評定平均
- 小論文
総合型選抜による選考が多く、その際に必要となる英語力や面接・小論文などへの対策が必要です。当然ながら「高い評定平均」が求められますので、高校1年生からの定期テスト対策もぬかりなく行ってください。
海外大学で重視されるもの(例)
- 評定平均
- エッセイ
- 課外活動やボランティア活動
- プロジェクトリーダー経験
- Grade Point Average(GPA)<※3>
<※3>GPA
多くの日本の大学で採用されている基礎学力の指標。履修した科目の成績を数値化し、1単位あたりの平均点を算出したもの。海外留学の選考時や奨学金申請時に活用される。
個別指導Axisからのメッセージ|後悔しないための進路・大学の選び方
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「英語習得」だけを目的にした海外大学進学は慎重に!
どちらを選ぶか?を考える際、いま一番初めに検討していただきたいことは、「費用」です。特に海外大学への進学を考えるなら、いまの円安の環境下では、学費や生活費などの経済的負担はかなり大きくなります。
少なくとも、「英語力をつけたい・高めたい」だけを目的として海外大学進学を決めるのは早計です。なぜなら、英語はあくまでコミュニケーションのためのツールに過ぎないから。そしていまの日本の国際系大学・学部なら、昔でいう「海外留学」と同様の環境が整っていますから、かなり高いレベルの英語力が身につけられるのです。
日本の大学・海外大学のどちらが優れているかではなく「自分に適した環境」を見極める視点
日本の大学か海外大学かを選ぶにあたっては、どっちが優れているか?ではなく、自分に適しているのはどっちか?をじっくり考えてください。
何を学びたいのか?それは国内・海外問わず、どこの大学なら学べるのか?自分は将来、どんな仕事に就いて、どこで働いて、どんな人生を送りたいのか?自分の性格から考えて、日本・海外のどちらで学んだ方が快適なのか、伸びやすいのか? どちらの環境で成長したいのか? こうしたいろんな角度・視点から考えてみることが大切です。
個別指導Axisでは、学習のお悩みはもちろん、生徒一人ひとりに寄り添った進路の相談もおこなっています。どんな些細なことでも、お気軽にお近くの校舎へご相談ください。
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この記事を書いた人

学校法人 ワオ未来学園
ワオ高等学校
進路指導部長/グローバルコース・英語科
笠井 照彦 (かさい てるひこ)
能開センターで英語指導や教材開発、シンガポール現地法人(WAO Singapore)の設立など、英語教育・海外関連業務に幅広く携わる。現在はワオ高等学校にて進路指導部長及びグローバルコースを担当。著書『英語長文を論理的に読み解く本』(KADOKAWA)