「数学が苦手だから文系に」本当にその考え方でいいの?
文理選択の決め方、後悔しない選び方は?

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高1の秋には、進学について文系・理系の選択を求められます。 とはいえ、高校に入って半年程度のこの時期に、将来のやりたいことが決まっているような生徒はごくわずか。では、何を基準にして、どのように考えて、文理の選択をすればよいのでしょうか。後悔しない文理選択の考え方について解説します。
この記事のポイント

文理選択の前に知っておきたい大学・学部のいま
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文理融合・学際融合学部の増加と文系・理系の曖昧化
近年、大学・学部は文理融合・学際融合が進んで文理の境界が曖昧となり、学部名だけで文系なのか理系なのかを判断するのは難しくなっています。
例えば、次の学部名を見て、そこで具体的に何を学べるのか、明確にイメージできる人は少ないはずです。
<名前からだけでは何を学ぶのかが判断しにくい学部(例)>
・ データサイエンス学部
一見、理系学部のようにも思われるが、統計学や情報分析の仕方などを学ぶものや、 社会課題の解決策やビジネスへの応用方法などの提言をまとめたり、起業家育成などをめざしたりするものなどもある。
・ 人間科学部
文系のようにも理系のように思われる学部。心理系・社会系・文化系・教育系・福祉系・健康系などのさまざまな学問要素が含まれており、重きを置いている分野やその割合は大学によって異なる。
・ 環境創生学部
環境保護を学ぶ学部と理解されがちだが、生物学・農学・ 土木工学・地域政策・都市開発・エネルギーなどの多岐に渡る学問要素が含まれており、重きを置いている分野やその割合も大学によって異なる。
・ 共創学部
近年増えている学部名。地域創生・起業・デザイン思考・SDGs・データ活用など、文系要素も理系要素も含まれた幅広いジャンルの学問を組み合わせて学ぶ。
保護者世代では、文系なら法学部・経済学部・商学部・文学部など、理系なら工学部・理学部・農学部・医歯薬系学部などにざっくりと分かれていましたが、いまはそうではありません。細かく情報収集しなければ、「その学部でいったい何が学べるのか」の実態を理解することは困難です。
[関連ページ]志望大学・学部の選び方、決め方
「数学が嫌いだから文系」という消極的選択に潜む落とし穴
文系を選ぶ人の理由として、今でも一番よく聞くのがこの「数学が嫌いだから文系」です。これは必ずしも間違いとは言い切れないのですが、かといって、そんなに安易に決めてよいものではありません。
その第一の理由は、文系でも受験科目に数学が必要なケースはたくさんあるからです。もっともわかりやすい例は、国公立大学受験の「共通テスト」です。ここでは数学ⅠAや数学ⅡBCが課せられ、文系志望とはいえ、相応のレベルの大学・学部を受験しようとするなら数学IAを最低7割程度は得点することが必要です。
また、前述のように、文理の境界が曖昧になってきているいま、文系学部でも、2次試験で数学を課す大学も増えています。となると、「数学が嫌いで、数学を避けたいから文系」という「消極的な選択」をしてしまうと、受験できる大学・学部の選択肢が狭められてしまいます。
実は、私立大学でもこうした文理融合系学部では、数学を試験科目化する傾向が見られるので注意が必要です。
文系志望でも共通テスト数学ⅠAで7割(70%)の得点力が必要
そもそも、高1の段階で文系学部・理系学部のいずれに進学したいのかを決められる人は多くありません。これからたくさんのものに出会い、経験を積んでいくなかで、何に興味を覚え、何を学んでみたいと感じるのか…なかなか難しい課題です。その段階で、早々に数学を諦めてしまう弊害は、後の影響が大きいので、苦手でも粘り強く取り組むことをおすすめします。
頑張る目標としては「共通テストレベルの数学ⅠAで70%得点できる力」と心得ておいてください。何よりも、高1の段階で、数学の得意・不得意を判断するのはちょっと早い気がします。苦手でも何とか続けていくことで、いきなり目の前の視界が晴れたように理解できる時が来ます。それまで、コツコツと取り組んでみてください。
そうした地道な努力をした生徒の多くは、高2になったころには「数学は好きではないけど人並みにはできる」ようになっていることが多いです。数学は習っているときが一番難しく感じますが、しばらくして振り返ってみると「あれ?何でこんなのができなかったの?」と思える自分に気づくことがある、そんな学問だからです。
[関連ページ]2026年度共通テスト「数ⅠA」分析と対策
やりたいことが決まってない人に、迷った時の「3つの判断軸」
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文理選択の悩む生徒の相談で一番よく聞く言葉は、「何をどう考えたらいいんですか?」。つまり、自分はいま何に迷っているか、何に困っているのかさえよくわからない…。そんな状態の生徒がほとんどです。
そこから質問を重ねて悩みの原因を解きほぐしていくと、概ね、次のようなことに引っかかっていることが多いようです。
< 代表的なお悩み例 >
- 将来やりたい仕事が分からない
- とりあえず大学には行きたいが、何をどんな基準で選べばよいのかわからない
- 文系・理系の違いや、それぞれのメリット・デメリットが分からない
- 一度決めたら、あとで変えられないような気がする
これらの悩みを整理するために、以下の「3つの判断基準」を元に考えてみることをおすすめしています。
【 判断軸1 】 将来やってみたい仕事や働き方の希望から考える
まず考えてもらうのが、「将来やってみたい仕事」です。
とはいえ、高1時点で未来の自分の仕事を想像するのは容易ではありません。ほとんどの生徒は「?」マークだらけ、むしろそれが普通ですから、決めていないからといって焦ることも、悩むこともありません。じっくり考えてみる初めての機会として捉えたらよいと思います。
その際には、「職業名」だけで考えるのでなく、どんな働き方をしてみたいか、どんなことに喜びを感じるかといった「ぼんやりした希望」も言語化してみるとよいでしょう。
< 「ぼんやりした希望」の言語化の例 >
- 人と関わる仕事がしたい
- ものづくりが好き
- 人からありがとうと言われると嬉しい
- 誰かの何かに役に立って貢献したい
【 判断軸2 】 自分の「好き・興味」をエネルギーにして選ぶ
仮に、【判断軸1】「将来やってみたい仕事」を明確に言語化できたとしても、それを理想形だと考えすぎない方がよいでしょう。実際に、いま就いている仕事が本当にやりたかった仕事ではない社会人もそれなりにいます。いろんなことに出会えば興味の幅も広がるし、就きたい仕事の理想形も次々に変わっていくともあります。それほどこだわりなく始めた仕事だったけど、続けているうちにとても好きになった。そう感じることも多々あるからです。
「好き」という感覚は本能的なものでもあり、夢中になれたり、頑張って継続できたりするためのエネルギーになるので、うまく向き合えるといいですね。
< 代表的な「好き」の例 >
- 調べたり考えたりするのが好き
- 物語を作ったり文章を書いたりするのが好きか
- 実験したりシミュレーションしたりするのが好き
- ひとつの答えにたどり着く過程を考えるのが好きで、答えが出るとスッキリする
「好きなことはあるものの、得意とは言えない」と不安を感じる人もいるかもしれません。
しかし、現在の得意・不得意はそれほど問題ではありません。今はできていなくても、努力していればできるようになることもたくさんあります。 一方で「好き・嫌い」は意外と多分に生理的な要素も含まれるときがあるので、努力しても改善しない場合があります。
あまり先入観を持たず、まずは自分が「好きと感じること・興味を感じること」を素直に探してみることをおすすめします。
【 判断軸3 】 得意科目や配点、数Ⅲの履修を見据えた「入試戦略」で選ぶ
より現実的な判断軸を挙げるなら、入試戦略から考えてみるという方法もあります。
具体的には、自分の得意科目を最大限に活かせる学部・学科を調べてみるという方法です。
「受験科目にある・ない」はもちろんですが、その得点配分なども調べてみると、「自分がその学部・学科に受かる・受からない」がより具体的にイメージできます。受かったら、果たして自分はどんな学生生活を送ることになるのか?そうしたシミュレーションをしていくなかで、気になる大学・学部を見つけることができるかもしれません。
もう一つ、この方法が優れている点は、文理選択後の履修科目を具体的にシミュレーションできる点です。
特に理系の場合には、「履修する・しない」を慎重に判断したほうがよい科目があります。それは、数Ⅲです。一般的には履修するのが前提ですが、学習難度が高いため、途中で諦めて受験科目から外す選択をする生徒を目にします。それまで費やした時間もムダになってしまうため、ほかの科目の受験対策にも影響がも出るかも及ぼしかねしれません。しっかりと先を見据えて、取り組むようにしましょう。
文理とも、自分の得意な科目で受験できる大学や学部、配点も有利に働く学部や学科を探して、まずは合格をしっかり勝ち取る…そして、入学後に履修する学問の範疇で「自分のやりたいことを見つける」というもの、決して悪い選択ではありません。できるだけ、将来、自分がやりたいことに近いものの中から、合格しやすい学部や学科が選べると理想的だと思います。
文理選択後、学習の仕方はこう変わる!
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文系・理系で「学習時間」に大きな差はないが、「質」が変わる
「理系はいっぱい勉強しないといけないので大変。その点、文系は時間的にはゆとりがある」。こんなことを聞いたことはありませんか?これはちょっと正しくありません。
これは、「受験科目を3科目に絞ることができる私立文系の受験」を前提として話しているのだと思いますが、難易度の高い大学を受験するなら、たとえ3科目であっても、科目が絞られたぶん「より深いところまでの理解や知識」が必要となります。さらに、記述問題などでは「体系的な相互理解」も問われることがあり、別の「難しさ」が発生します。よって、学習量自体は、理系の方が多めですが、学習時間自体は文系と理系で大差はないと思ってください。
また、文系と理系では、学び方の「ベクトル」が変わります。文系は「インプット」の学習が多めですが、 理系は終盤になればなるほど「アウトプット」に多くの時間を使うようになります。
インプットが多めの文系 : でも単なる「暗記・覚えるだけ」では通用しない理由
- 大前提として、覚えなければならない量は文系の方が圧倒的に多い。
- 英語・国語では「長文問題」が増え、長文を早く正確に読み解くための力が求められる。
- 読解力だけではなく、論述力(自分の考えをまとめたり、論じたりできる力)も必要になる。
- 社会科目の比重が重くなる。そのため、まずは必ず暗記しせなければならないことが増える。
- 難関私立大学の記述問題などは、単に記憶しただけでは得点できない。それぞれのできごとの背景や因果関係など、覚えた知識を体系的に整理し直す学習も必要になる。
アウトプットが多めの理系 : 「わかる」から「できる」に変える重要性
- 大前提として、数Ⅲを選択するかしないかは、慎重な判断が必要。
- 数Ⅲを選択するならなおさら、数式の処理スピードが求められ、演習量は一気に増える。
- 数Ⅲは単元ごとの考え方が理解できていないと、必ずどこかでつまずく。
- 「わかる」と「できる」も別物。「わかったつもり」なのに、解答の途中で手が止まることがないか、冷静な見極めが必要。
- 単に公式を覚える・当てはめるといった機械的な演習だけではなく、公式(道具)を柔軟に駆使して解く練習が必要。
高校の部活動と受験勉強を両立させるために不可欠な「計画性」
文系・理系で学習時間自体に大差はないので、文理選択によって高校生活に極端に変わるということはそれほどありません。ただし、前述のように「勉強の質」が変わるなかでは、必要な学習時間数は1年より2年、2年より3年と、進級するにつれて確実に増えていきます。ましてや、旧帝レベルの国立大学や、最難関レベルの私立大学を目指すなら、それなりの学習時間の確保が必須です。そこで注意しておかなければならないのが、部活動との両立です。
せっかくの高校生活…部活動に真剣に打ち込むのも、とても価値のあることだと思います。部活動に限らず、高校3年間で何かをやり切ることは、他には代えがたい経験になることも多いので、やると決めたら全力で取り組んでほしいと思います。と同時に、その分、学習時間が削られることも事実。それを克服するには、学習とそれ以外にかける時間のバランスをうまくとるのがポイントです。受験本番までにやるべきことが間に合えば、ちゃんと合格できること信じて、大切なのは「計画性」を意識して、日々の生活リズムをつくっていくことです。受験もそれ以外も両方やり切ったという自信は、必ず一生ものの宝になりますよ。
文理選択にまつわる「都市伝説」あれこれ
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「理系の方が就職に有利」は本当か?
データサイエンスやAIなどがもてはやされる近年、これまで以上に「理系学部の方が将来の就職には有利」という話もよく聞きます。それは、「世の中的には間違ってはいない」のかもしれませんが、「文理選択の判断基準とすると判断を誤る」かもしれません。
それほど好きになれない・得意でもない人が理系を選んで、有利に就職できたとしても、その後の人生でわだかまりを抱えて過ごすことになるかもしれません。文系を選択して、苦労してやりたい仕事に就くのも選択肢のひとつと考えるべきでしょう。ITにしてもAIにしても、それで起業している人たちはエンジニアばかりではなく、むしろ文系的要素の強いアントレプレナーシップを学んできた人たちも多いのです。世の中でいわれる「有利・不利」や「損得」で考えるのではなく、自分自身が納得・満足できる観点も大切にすべきです。
「文転(理系→文系)は簡単だが、理転(文系→理系)は難しい」の真偽と注意点
これは、概ね正しいと言えます。その理由は、前述の通り、受験にあわせて選択・履修する科目が影響するからです。しかし、高校によっては、安易な変更を認めない、そもそも変更できない場合があるので、必ず確認をするようにしてください。
たとえば高3になって文系から理系に変わろうとしても、数Ⅲを途中段階から履修することはかなりハードルが高いと言えます。受験科目に課されることが多い理科も、一部、独学で履修しなければいけない可能性があります。
逆に、理系から文系に転向する場合には、必要なのは国語と英語、地歴・公民。国語と英語は理系でも勉強しますから、あとは地歴・公民をどこまで追い込めるか、仕上げられるかになるので、取り組むべきことへのハードルは若干下がります。
「よくわからないときは理系を選んでおけばOK」が間違いである理由
先述の「理系から文系への変更は比較的容易にできる」からきている話と思われますが、認めていない高校もあるので、「よくわからない」となる前にきちんと考えて、決めていくことが大切です。それでも迷う…という人がいたら、最終手段として(後に文系への転向が可能なことを高校の先生に確認した上で)、一旦、理系を選択とする程度で考えるようにしてください。
また、「よくわからないときは理系を選んでおけばOK」と言われる背景には、学習面の事情もあります。文系・理系を変更した場合、先述のように自習しなければいけない教科が出てくる可能性があります。その場合、一般的に理系教科の方が、自習するのが難しいと言われているので、一旦、理系を選択しておいて、高校の授業で学習を進めておく方が効率的という考え方です。もし、同じような話を聞いても安易に流されず、しっかり考えた上で決めるようにしてください。
それでも決まらない人に個別指導Axisからのアドバイス
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高校生の文理選択とは、ちょっと大げさですが、「人生の岐路を決める第1歩」とも言える大きな決断だと考えています。
本来であれば、決定する秋に向かって、1学期のちょっとした機会、あるいは夏休みに入る前に「自分の将来に真剣に向き合う時間を取る」指導がもっと必要だと思っています。
生徒を取り巻く環境において、判断する材料やどう考えるべきかという方向性をもっと提示していかないと、高1が自分ひとりで決めるのは至難の業です。結果的として、噂レベルの話に流されたり、適当に決めていないかと危惧しています。そこで…
文理選択でわからなければ、困ったら、迷ったら、まずは相談を!
文理選択は、当然ながら迷うものです。少しでも「迷って」くれたならよいのですが、「数学が苦手だから文系」とか「とりあえず理系で」といった、安易な方向性に流されて選択してしまうケースもあります。しかし本来は、自分の人生を決める最初の大きな決断の一つです。
今や中学生・高校生のキャリア教育の必要性が求められる時流なのに、大学・学部選び方はあまり変わっていない気がしています。その結果、大学入学後に「こんなはずじゃなかった…」というギャップに苦しむ学生も少なくないようです。だからこそ、しっかり考えて、しっかり迷って欲しい。わからなければ、困ったら、真っ先に相談して欲しいと思います。わからなくてあたり前、迷って当たり前なのですから。
相談しながら、自分に合った進路を自分で決断していく大切さ
相談しても最後に決めるのは、あくまで「自分自身」です。私たちは「答え」が見つかるまでのサポートは全力ですることができますが、「答え」そのものを出すことはできません。なぜなら、その人生を歩むのは、本人だからです。自分で決めたから頑張れる、続けていくモチベーションにもつながるのです。文理選択とは「自分で調べる、考える、そして進む」という、自分で決断しながら人生の歩みを進めていく最初の機会ではないでしょうか。
個別指導Axisでは、いつでも学習相談を受け付けています。現在の悩みや課題はもちろん、その先に目指す進路や目標まで見据えながら、一人ひとりに寄り添ったサポートを行っています。文理選択について迷っている方や、学習に関する不安・疑問をお持ちの方は、ぜひお気軽にお近くの校舎へお問い合わせください。
この記事を書いた人

(株)ワオ・コーポレーション
大学受験部門責任者
栗田 智文(くりた ともふみ)
進学塾での指導歴30年以上、1万人以上を導いた経験と洞察力に基づき、激動の大学入試事情を緻密に分析。的確なアドバイスで志望校合格へと導く指南役。