大学推薦入試(学校推薦型選抜/総合型選抜)とは?
複雑になった仕組みと種類・特徴を解説!

現在の大学受験は、学校推薦型選抜(旧推薦入試)や総合型選抜(旧AO入試)などの選抜方法による入学者の比率が急増。すでに私立大学では、入学者の半数はこれらの選抜方法で入学しています。「ひと昔前の受験常識」では理解できないほどに複雑化したこれらの制度とは、いったいどんなものなのか?その仕組みと特徴を解説します。

この記事のポイント

  1. おもな大学入試の選抜方法
  2. 学校推薦型選抜・総合型選抜・一般選抜の割合
  3. 学校推薦型選抜の特徴
  4. 学校推薦型選抜の種類
  5. 総合型選抜の特徴
  6. 学校推薦型選抜・総合型選抜の評価方法
  7. 出願可否の鍵を握る「評定平均」とは?
  8. 学校推薦型選抜・総合型選抜の評価対象
  9. 1年から学校の勉強にきちんと取り組むことが大切
  10. 学校推薦型選抜のスケジュール
  11. どうする?不合格の場合のリカバリー
  12. 学校推薦型選抜、総合型選抜、一般選抜、どれに向いている?

おもな大学入試の選抜方法

まず初めに、いまの大学入試のおもな選抜方法を整理しましょう。これを大別すると次の3つに分類されます。

  1. 一般選抜
  2. 学校推薦型選抜(旧推薦入試)
  3. 総合型選抜(旧AO入試)

1の一般選抜は、いわゆる一般的な入学試験です。志望する学部・学科ごとに課される学科試験、小論文や面接などの合計得点で選抜される「学力重視」の選抜方法です。

2の学校推薦型選抜は、従来は「推薦入試」と呼ばれていた選抜方法です。出願には出身高校からの推薦書が必要となります。それに加えて、小論文や面接、学科試験などを経て合格者を選抜する方法です。2021年度の入試から「学校推薦型選抜」に改名されているので、注意しておいてください。

3の総合型選抜は、以前は「AO(アドミッションズ・オフィス)入試」と呼ばれていましたが、これも2021年度の入試から改名されました。試験の点数だけではなく、受験生がその大学で学びたいという意志や目的を評価するため、小論文、面接、グループディスカッションなど「人物重視」の選抜を、時間をかけて実施し、合否を決める方法です。大学が求める学生像(アドミッション・ポリシー)とのマッチングが選考基準になるので、HPなどで各大学が掲載している内容も確認しておきましょう。

学校推薦型選抜・総合型選抜・一般選抜の割合

入学定員の50%超が学校推薦型選抜と総合型選抜で入学

現在の選抜方法別の入学者数を見てみましょう。
大学全体では、一般選抜が約49%、学校推薦型選抜が約36%、総合型選抜が約15%。私立大学に限れば、学校推薦型選抜や総合型選抜などのいわゆる「推薦型の入試」による入学者比率が60%に迫る勢いです。(※2023年11月現在)
保護者世代の約20年前の大学受験は、ほぼ「一般選抜」のみでした。学校推薦型選抜(旧推薦入試)も私立大学の一部で行われていたに過ぎず、国公立大学では、ほぼ皆無でした。選抜方法が多様化している状況から考えると、今の大学受験は「ひと昔前の受験常識」が通用しなくなっていると言えるでしょう。

【入試方式別/入学者割合】

学校推薦型選抜の特徴

学校推薦型選抜は、出身高校の推薦書が必要

これらの選抜方法の仕組みと違いを理解するためにも、まずは入学者の35%を超える「学校推薦型選抜」について解説します。

選抜方法の種類と違い

選抜方法 評価の仕方 出身校の推薦 併願可否 出願条件 試験概要
学校
推薦型
選抜
指定校制 多面的
評価
必要 専願 出身校の
学校長
推薦
書類審査、学科試験、面接など
公募制
・一般選抜
・特別推薦選抜
多面的
評価
必要 基本的に専願
私立大では併願を認めるケースもある
出身校の
学校長
推薦
書類審査、学科試験、面接など
総合型選抜 多面的
評価
不要 併願可 大学・学部が提示する条件を満たすこと 書類審査、学科試験、面接など
一般選抜 学科試験
重視
不要 併願可 大学・学部が提示する条件を満たすこと 共通テストや、大学・学部ごとに定められた学科・科目試験を受験。面接が課せられることもある

学校推薦型選抜の最大の特徴は、出身高校(学校長)の推薦書が必要なこと。成績(評定平均)、スポーツ・文化活動における功績など、出願要件を満たす生徒が、高校から推薦を受けることが出願の条件となります。
また、大学の授業に適応できるか否かを判断するために、学力検査、小論文、口頭試問、資格・検定試験の成績、大学入学共通テストなどのうち、少なくとも一つは活用するようにも定められています。
文部科学省:令和3年度大学入学者選抜実施要項より
出身高校から推薦を受けることが前提なので、基本的に合格した場合には進学することが必須となります。形式的とは言え、専願を前提とした出願になることを踏まえると、学校推薦型選抜や総合型選抜を複数出願することは、あまりお勧めできません。

学校推薦型選抜の種類

学校推薦型選抜には、「指定校制」と「公募制」がある

【指定校制】
校内選考を通過すれば、ほぼ合格が決まる選抜方法

大学側が高校に対して推薦入学の定員枠(推薦枠)を用意して、優秀な入学者を募集するという選抜方法です。
まず、高校内で該当大学の推薦枠へ出願するかどうかの希望調査が行われます。次に応募者を対象とした校内選考が9~10月頃に実施されます。
選考基準としては、大学側が求める評定平均(高校1年~高校3年1学期までの成績の平均)、高校生活の様子や課外活動などを総合的に評価されて、推薦するかどうか判定されるようです。
なお、推薦枠の定員は1~3人程度と非常に少ないので、校内選考自体、狭き門といえます。さらに、応募者が定員に満たない場合でも「該当者なし」という結果もあるので、注意しておきましょう。

これらの選考を通過して高校からの推薦を勝ち取れば、その時点でほぼ合格が決まります。高校での成績維持は必要ですが、入学試験を受ける必要もなく、校内選抜で合格が決まる最強の選抜方法といえます。

一方で、高校から推薦を受けて進学するだけに、進学後の成績や講義への出席状況なども含め、模範的なキャンパスライフを求められるようです。その動向は大学側の出身高校に対する信頼に大きな影響を及ぼすので、最悪の場合、推薦枠を減らされる(なくなる)結果につながることもあります。高校の後輩や先生方に迷惑がかからないように自覚を持った行動が求められることも十分意識しておきましょう。

【公募制】
公募制一般選抜と公募制特別推薦選抜の2種がある

一方の公募制は、大学が指定する評定平均などの出願資格を満たし、出身高校の推薦があれば、どの高校からどの大学にでも出願できます。
公募制はさらに二つに分かれます。一つは公募制一般選抜と、スポーツや文化活動で活躍したことをアピールできる公募制特別推薦選抜です。

<公募制一般推薦>

評定平均などの出願資格を満たしていれば、どの高校からどの大学にも出願できるだけに、人気のある大学・学部の倍率は高くなります。指定校制と異なり、出願できても高い確率で合格できるというわけではありません。また、人物評価に加えて、共通テストなどを活用した学力試験を実施する大学が多いのも特徴です。
なお、国公立大学で実施される学校推薦型選抜は、一部の公立大学を除き、この公募制一般推薦のみとなるので、注意しておいてください。私立大学に比べると、募集人員も少なく、評定平均や出願基準など、思いの他、ハイレベルな要件を求められるケースがほとんどなので、早めに各大学の出願要件を確認しておくとよいでしょう。

<公募制特別推薦選抜>

出身高校の推薦を得て、スポーツや文化活動などにおいて、優秀な成績や特筆すべき成果を出願条件とする選抜方法です。

総合型選抜の特徴

総合型選抜は出身高校の推薦は不要、自ら出願可能

総合型選抜と学校推薦型選抜との最大の違いは、出身高校からの推薦を必要とせず、受験生が自らの意志で出願できる点です。必要な出願書類を提出し、書類選考を経たうえで、大学が課す小論文や面接等の試験へと進みます。受験生の能力、意志、熱意などを多面的に評価し、大学が求める学生像にふさわしいか、総合的に判定します。

学校推薦型選抜・総合型選抜の評価方法

面接+小論文などの人物評価が中心

基本的に、学校推薦型選抜は高校生活での努力を中心に評価し、総合型選抜は大学での今後の学びに対する意志や姿勢を中心に評価する選抜方法です。
いずれの方法も、面接+小論文での評価が中心となりますが、高校生活でどんなことを頑張ってきたのか、それを活かして大学で何を学びたいのか、それを学ぶためにこの大学を選んだ理由をアピールすることがポイントになります。

学校推薦型選抜(と総合型選抜)の試験概要

書類選考 調査書 学校での成績や生活態度などを記載
推薦書 学校が生徒を推薦する理由を記載
※学校推薦型選抜のみ
志望理由書
自己推薦書
エントリーシート
など
生徒が志望動機、入学後に取り組みたいこと、自己PRなどを記載
面接 個人で、あるいはグループで行われる。志望する分野について専門的な質問をされるケースもある
小論文 設定されたテーマに従って、自分の見解や意見を論じるものや、長文を読みそれに関連する問いに対してまとめていくものなど、出題の仕方はさまざま。扱われる話題のジャンルも、志望学部に関連するものから、社会課題や時事問題など幅広い
プレゼンテーション 生徒が出願時に作成・提出したレポートなど対して説明を求めたり、数人のグループでワークショップを行い、その内容について発表させたりといった形式のプレゼンテーションもある
学力試験 科目ごとの学力試験を課す場合もある
共通テスト結果 共通テスト結果を選考材料として活用する場合もある
実技試験 体育系、美術や音楽などの芸術系学部の場合、実技試験を課すケースもある

出願可否の鍵を握る「評定平均」とは?

評定平均とは、学校推薦型選抜や総合型選抜の出願に必要となる調査書に書かれる「全体の学習成績の状況」のこと。大学が求める出願条件として「高校1年~高校3年1学期までの成績」が対象となることが多く、その期間の全科目の成績(5段階)を足し合わせ、履修した全科目数で割った数値です。

【TOPICS】
10段階評価の学校の換算基準にも注意

評定平均は5段階評価ですが、高校の成績評価は10段階。高校のなかには、成績を10段階で評価している高校もあります。こうした場合5段階へ換算の仕方も、学校ごとに定められた基準があります。10段階の9と10を5とする場合もあれば、8、9、10を5とする学校も。学校への確認が必要です。
大学によっては、A・B・C・D・Eの5段階評価を求めるケースもあります。下表はその対応表です。

全体の学習成績の状況
(評定平均)
5.0~4.3 4.2~3.5 3.4~2.7 2.6~1.9 1.9以下
学習成績概評 A B C D E

令和3年度大学入試選抜実施概要(文部科学省)より

学校推薦型選抜・総合型選抜の評価対象

対象は主要科目だけでなく、定期テストだけでもない

受験に必要な成績と聞けば、英語・数学・国語などの一般的な受験主要科目に目を奪われがちですが、評定平均はそうではありません。音楽、体育、保健、家庭といった科目も1科目としての重みを持ちます。

また、評価対象は定期テストだけでもありません。2022年度からの学習指導要領で重点的な育成目標に掲げられている3つの観点、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」についても評価されます。

1年から学校の勉強にきちんと取り組むことが大切

評定平均の対象期間は、高校1年~高校3年1学期までと長期間にわたります。そのため、高い評定平均を得るには、1年次から学校の勉強にきちんと取り組むことが大切です。

また、高校3年次の1学期の定期試験には注意が必要です。この時期の対象となる定期考査は1学期の中間試験と期末試験の2回のみ。この成績が3年次の評定点となります。 1・2年次の評定点は、回数が多い分、どこかの定期試験で失敗したとしても、どこかでリカバリーが効きます。しかし、3年次は回数が少ないため、1回の失敗が評定に与える影響も大きくなるので、注意して取り組むようにしましょう。

学校推薦型選抜のスケジュール

指定校制は10月までに校内選考、公募制は11月からの出願に

学校推薦型選抜の受験スケジュールは、一見、指定校制も公募制も11月から出願して、12月以降に合格発表と同時期に見えますが、必ずしもそうではありません。指定校制の校内選考が行われるのは10月中で、その結果を受けて11月に出願、公募制は実際に大学で選考が行われる11月以降からスタートと思っておいた方がよいでしょう。

学校推薦型選抜のスケジュール

どうする?不合格の場合のリカバリー

学校推薦型選抜であれ、総合型選抜であれ、当然ながら不合格となるケースはあります。ただし、学校推薦型選抜や総合型選抜は基本的には専願での出願となるため、複数校受験することはできません。一部、併願を認めている私立大学もあるので、志望大学の受験情報をしっかりと確認しておいてください。

不合格となった場合は、合格発表後でも出願できる2次募集に出願することも考えられますが、一般選抜との併用が可能なので、他の大学に出願しても構いません。また不合格となった学校に、一般選抜で再度チャレンジすることもできるので、志望校に合格するチャンスを増やしたい人におすすめです。

学校推薦型選抜、総合型選抜、一般選抜、どれに向いている?

最後に…どの選抜方法が最も自分に適しているのか、悩む人も多いと思います。受験時期と準備のタイミング、それまでの学校の成績や課外活動の実績、科目に対する得意・不得意、本人の性格など、様々な要素が絡み合います。それぞれの適性については、以下の表を参考にしてください。あてはまるものが多ければ、その選抜方法に向いている可能性大です。

なお、合格を勝ち取る作戦の1つとして「受験機会を増やすこと」があげられます。選抜方法も1本に絞るのではなく、早い時期に実施される「学校推薦型選抜」とその後に実施される「一般選抜」を併願する「2段構え」で考えておくことをお勧めします。実施時期が異なる方式を有効に活用すれば、少なくとも受験する機会が2回に増えるので、合格の可能性もアップすることが期待できます。

ただし、「総合型選抜」と「一般選抜」の併願はあまりお勧めできません。大学のレベルにもよりますが、総合型選抜の受験準備は思った以上に時間がかかることが多いので、一般選抜の準備を同時進行で進めることが難しいためです。以下の表を参考にして、自分が総合型選抜に向いていると思えば、1本に絞り込んで、大学が求める様々な出願要件をクリアできるように早めの準備を始めていきましょう。

それぞれの選抜方法に対する適性

選抜方法 こんな人が向いている
学校
推薦型
選抜
指定校制 高校が持つ指定枠に、自分の学びたいことと合致した志望大学・学部がある人
全科目の総合成績で、苦手教科がなく、まんべんなく1年次から良い成績が取れている人
学校生活の中で積極的に取り組んでいることをアピールできることがあれば、より有利に
公募制
・一般選抜
・特別推薦選抜
自分が学びたいことが明確で早期に志望校を絞れる人
1年次から苦手教科がなくまんべんなく良い成績が取れている人
スポーツや文化芸術分野で秀でた実績があるなら、特別推薦選抜でアピールできる
総合型選抜 自分が学びたいことが明確で早期に志望校を絞れる人
自主性・能動性・協働性に富み、自らアイデアを練ったり、それに基づいて行動したりできる人
1年次から、学業以外にもいろんな活動に取り組み、優れた実績を残している人
一般選抜 3年生になってから勉強に力を入れ始めた人
時間が限られているなかでも、忍耐強く学習に集中できる人
主要受験科目(英語・国語・数学・理科<物理・化学・生物・地学>・社会<地理・歴史・公民>)に得意科目があり、志望大学の受験科目と一致している人

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この記事を書いた人

(株)ワオ・コーポレーション
大学受験部門 責任者