【中学生】数学の勉強法!苦手にしないためのポイントは?
数学ほど、人によって得意・不得意がはっきり分かれる科目はありません。 同時に数学は、理系科目の根幹をなす科目だけに高校受験だけでなく、その先の大学受験にも大きく影響します。 せめて「好きではなくとも一定以上は得点できる」ようにするには、どんな勉強をすればよいのか? 塾で中学数学を指導するプロが、数学を苦手にしないための勉強のコツをアドバイスします。
この記事のポイント
数学を苦手にすると、将来の進路の選択肢が狭くなる
中学校で苦手教科が生まれると、将来の進路選択にも影響します。特に数学は理系科目の根幹となる教科だけに、数的概念の理解や計算力、解き方のルールなど基礎が身についていなければ、高校で習う化学や物理にも影響します。大学受験で理系学部を志望する場合、これらの科目は必須科目となります。また文系学部であっても、近年、経済学部や社会学部に設置されることも多いデータサイエンス系の学びでは、受験科目に数学を課すケースが増えています。そのため、中学校のうちから数学を苦手教科にしないことが大切です。では、苦手にしないためには、どんなことに気をつけたらいいでしょうか?
「好きではなくとも一定以上は得点できる」ことが大切
人にはそれぞれ資質(個性)があり、それによって科目に対する多少の向き・不向きは生まれてしまいます。たとえば、「物語性の高いものが好き」な生徒は国語や社会(地理・歴史など)が得意な傾向が、「ロジックで考えることが好き」な生徒は数学や理科(物理・化学など)が得意な傾向が見られます。
そして厄介なことに数学は、この「好き・嫌い」「向き・不向き」の個人差がはっきりと出やすい教科です。他の教科に比べ、「とにかく嫌いだし苦手」という生徒が多いように見受けられます。
とはいえ、そのままにしておいては、いろんな場面で足を引っ張られてしまいます。ここで大切なのは、「好きではなくとも一定以上は得点できる」ようにしておくことです。もちろん「好きでできる」ようになれればベストですが、興味を感じにくい教科をいきなり得意教科にするのは至難の業です。まずは足を引っ張らない程度の得点力をつけておくことを心がけましょう。少なくとも、中学校の数学レベルであれば、それは十分可能なのです。
完璧な理解を求め過ぎず、覚えるべきルールや公式に習熟する
小学校で習った「分数の割り算」以来、なんとなく算数・数学に苦手意識を持つようになったという人は珍しくありません。
1 2 ÷ 1 2 =1
「分数の割り算は、後ろの分数の分母・分子を入れ替えて掛け算する」というルールがありますからそれに従うと…。
1 2 × 2 1 = 2 2 =(約分して)1
ところで、なぜ、分数を分数で割るときには、このような計算式になるのでしょう?そもそも、「分数」を「分数」で「割る」というのは、どのような概念なのでしょう?
誤解を恐れずに言えば、この分数の割り算がなぜそういう計算式になるのかを正しくわかりやすく説明できる人は、たとえ学校の先生であっても多くはないと思います。
中1数学の初めの単元は、「正負の数」です。
-1×-1=1
が正解ですが、この「マイナスとマイナスをかけるとプラスになる」というルールも理解しづらいものです。小学校では、足し算や引き算をする際にはリンゴやミカンを並べて数えました。ところがこちらは「マイナスという目に見えない概念」を理解せねばならないからです。
実はこの「マイナスの概念」は、のちに方程式や関数を習い始めてやっと、全体像が見えて腑に落ちるものなのです。この時点では、根本的な理屈の理解に固執するよりも、その場で与えられる計算のルールや公式をきちんと覚え、それらを使った問題演習を繰り返し、手が勝手に動くまで習熟することを優先したほうが、少なくとも「得点できることで楽しくなる」はずです。
学年別・つまずきがちな単元を紹介
では、学年別につまずきやすい単元について見ていきましょう。
中1「文字式」
中学1年で習う単元は以下表の通りです。中学1年の2学期には「方程式」を学びますが、この「方程式がわからない」生徒の多くは、1学期に学ぶ「文字式」が理解できていません。
- 1.正負の数
- 2.加法と減法
- 3.乗法と除法
- 4.数の集合と素数の積
- 5.文字式ときまり
- 6.文字式の計算(1年)
- 7.方程式
- 8.方程式の利用
- 9.比例
- 10.比例とグラフ
- 11.反比例
- 12.平面図形
- 13.空間図形
- 14.立体の体積と表面積
- 15.資料の活用
文字式とは、数字と文字で表す式のことです。具体的な数の値がわからない場合(未知数)や、さまざまな値を当てはめられる場合(変数)を式化する概念です。
たとえば、100円のリンゴを3個買うと合計いくらになるか。ただし、値段は日々変わるので(変数)、今日と明日では合計金額が変わる可能性があります。
これを文字式化するには値段をaと置き、
合計金額=3×a=3a です。
方程式は、何の数字を答えねばならないかを理解して、問題文にある数字と未知数や変数を表す文字を使いながら式を作り解いていきます。その式化するための基本が文字式で、これを自由に操れるようにならなければ方程式は立てられないし、解けません。
さらに言えば、この文字式の理解が曖昧なままだと、方程式のみならず、図形、比例、平方根、関数など、このあと習う中学数学のすべてに影響してしまいます。それぐらい重要な単元です。
中2「合同と証明」
中学2年で気をつけねばならないのは、「合同と証明」です。
- 1.文字式の計算(2年)
- 2.文字式の利用
- 3.連立方程式
- 4.連立方程式の利用
- 5.一次関数
- 6.一次関数の利用
- 7.平行線と角
- 8.合同と証明
- 9.三角形
- 10.四角形
- 11.確率
- 12.四分位範囲
合同とは、「位置や向きを変えると完全に一致する2つ以上の図形」ことを言います。
たとえば、「三角形の合同条件」は3つあります。
1)3組の辺が等しい
2)2組の辺とその間の角が等しい
3)1組の辺とその両端の角が等しい
このいずれかの条件を満たせば、「二つの図形は合同である」と言えるのですが、それを論理的に証明していくのが「合同と証明」で習う内容です。証明するには、二つの図形の辺や角を見比べねばなりませんが、苦手な生徒はどことどこを見比べればよいのかがわかりません。
実はここでつまずく生徒には、この手前で習う「平行線と角」の理解が足らないケースがよく見られます。つまり、中学で習う図形系の学習の第一歩ですでにつまずいている可能性が高いのです。ここをうやむやにしてしまうと、中学3年の相似、三平方の定理などは理解が追いつかなくなってしまいます。
中3「平方根」
中学3年で気をつけねばならないのは、「平方根」です。
- 1.式と乗法公式
- 2.因数分解
- 3.式の計算の利用
- 4.平方根
- 5.√をふくむ計算
- 6.二次方程式
- 7.二次方程式の利用
- 8.関数 y=ax2
- 9.相似な図形
- 10.平行線と線分の比
- 11.円周角の定理
- 12.三平方の定理
- 13.標本調査
平方根とは、「ある数xをaの2乗で表現したいときのa」のことです。
2乗して2になる数は、±1.4142....となり、値は定まりませんが、この数を±√2(無理数)と表現します。(±√2)2すると2になりますが、(±1.4142.... )2しても2になりません。
さて、この上記の概念を理解できましたか? 平方根でつまずくケースの多くは、この「ある数xをaの2乗で表現したいときのa」とは何かを意味しているのかがわからない。それが無理数(数直線上に必ずあるはずの数字なのに、1点に定まらない数字)だと言われえるとますます混乱するのです。
この平方根が解けなければ、中学で習う二次方程式や関数、さらに言えば高校数学のほぼすべてに太刀打ちできなくなります。
また、この「ある数xをaの2乗で表現したいときのa」という表現を見ただけでも、いかに中学1年の文字式が重要なのかがよくわかるはずです。
「よくわかっていない」なら、授業進度を気にせず「戻る勇気」を
ここまで、学年別の「つまずきやすい単元」を解説しました。すでに気づかれているかもしれませんが、こうして見ると本当のつまずきの原因は、「つまずきが顕在化する単元の手前にある」ことがよくわかります。
「方程式が苦手だから方程式の練習問題をたくさんやる」「関数がわからないから関数の練習問題をたくさんやる」その前に、文字式はできているか?平方根は怪しくないか?単元を遡ってみて、曖昧なままにしているところはどこなのかを点検しましょう。
場合によっては、それは1年、2年前まで遡らねばならないかもしれません。学校の授業がどんどん進むなかでは、置いていかれるような不安に駆られるかもしれません。しかし、数学は基本的には「積み上げていく教科」です。弱点を抱えたままでは、その後はなかなか積み上がりません。よくわかっていないなら、授業進度を気にせず、わからなくなった単元まで戻って復習しましょう。
同じ問題を、解ける・手が勝手に動くようになるまで何度も解く
冒頭でお話したとおり、「好きではなくとも一定以上は得点できる」ことを目的とするなら、数学の学術的・根本的理解はいったん横に置き、その場で与えられる計算のルールや公式、解法をきちんと覚え、それらを使った問題演習を繰り返し、手が勝手に動くまで習熟することを優先してみましょう。
その際には、次々と新しい問題に手を出すよりは、教科書に載っている問題を中心にとして、同じ問題を解ける・手が勝手に動くようになるまで何度も解くことが大切です。一回目ではしっくりこなかった・違和感を覚えた点も、回を重ねていくうちに、計算の仕方に馴染んだり、あるいはぼんやりとしかわからなかった概念が腑に落ちていることに気づいたりもします。
効率よく克服するには、個別指導塾の活用も
とはいえ、つまずきに立ち返り、自分で勉強を組み立てるのは簡単ではありません。そこで活用したいのが個別指導塾です。今この単元がよくわからないのは何が理解できていないからなのか?どこに遡ればよいのか?どんな問題をどれぐらいの量解けばよいのか?
一人ひとりの弱点に応じた効果的な学習法を、組み立ててもらうことができます。
集団塾の場合は、一人ひとりのケアをするには限界がありますが、個別指導塾はまさにそれこそが最大の強み。適切な見立てを立ててくれる指導者に出会えれば、まさに「いそがば回れ!」です。
体験授業に訪れる際には、これまでの定期テストの問題用紙、答案用紙、授業ノートなども持っていくことをお勧めします。すぐれた指導者なら、それらのデータをもとに、比較的簡単に解決の糸口を見つけてくれるはずです。
親の関わり方「2つのNG」
こうした中で、親は子どもの学習にどう関わればよいのでしょう?
ここでは二つのNGをあげておきます。
まずは、一つ目のNGは、必要以上に干渉することです。その弊害は二つあります。中学生は、人生で一番多感な時期。親に面と向かって指示されたり叱られたりすれば、本当は勉強したほうがいいとわかっていたとしても、その心とは反対に、行動は歯向かうばかりで、かえってやる気を失いかねません。
そしてもう一つ、小学校のうちならともかく、どんなに親が頑張ったとしても、中学数学(特に入試問題)は親が指導できるほど簡単ではありません。ましてやつまずきの原因を探し当てることは、非常に難しいです。 そしてもう一つ、最大のNGは「無関心」です。なかでもよくないのは、「塾に預ければ何とかしてくれる」という無関心です。塾に通い始めたとしても、定期テストの結果や日々の様子をはきちんとチェックして、小言にならない範囲で「テストどうだった?」などの声かけをするようにしてください。
親のほどよい関わり方「演習問題の〇×つけ」
苦手な教科に対しては、子どもは何かにつけ「面倒くさがり」になります。たとえば、問題を繰り返し解くにしても、解くだけは解いても答え合わせは面倒くさがります。解き終えて、答えのページを探して、〇×をつけて、その解説を読み込んで…。その作業そのものが面倒なのです。
そこで、親が問題の〇×だけはつけてあげる。解説を理解する必要はありません。迂闊に指導しようとすれば、「なんでわからないの?」などと余計な一言も言ってしまいかねませんから。 そうではなく、答えのページを探して、〇×をつけて、「コレは合ってたよ、これは間違っていたから解説をもう一度読んでみれば…」でいいのです。こうすることで、子どもが何をわかって何がわかっていないのかもモニターできます。子どもからすれば、親がまるで無関心ではないというも認識できます。解ければテストの点数が上がる、点数が上がれば面白い、面白ければ頑張れる、頑張ればさらに点数が上がり、褒められ、認められる。その心の動きは誰でも同じです。そうした承認欲求を満たしていくことが、苦手をつくらない・克服できる原動力になるのです。
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この記事を書いた人
能開センター・個別指導Axis
オンラインゼミ(中学受験/高校受験/大学受験)責任者
佐々木 聡明