中学で鍛えるべきは、
知識を蓄える
土台づくりと読み解くための基礎力

中学国語を
苦手にしない勉強法

国語は、たとえば数学の文章題をはじめ、すべての科目に必要となる基礎科目です。そしてまた国語力は、中学・高校・大学の間にきちんと鍛えておけば、社会に出てからも「一生ものの財産」になる力です。

小学校と比べるとより高度な言語能力が求められ、一気に難易度が上がる中学の国語。苦手にしないための勉強法をプロに聞きました。

この記事のポイント

  1. 中学で国語が嫌いになる生徒に見られる「2つの予兆」
  2. そもそも国語力とは段階的に積み上げられる力
  3. 中学校で鍛えておくべき国語力と勉強法
  4. 中学生の国語学習で親ができるサポートとは?
  5. 国語は、勉強すれば必ず成績が上がる教科
  6. 国語力を鍛える、塾の上手な選び方と活用法

中学で国語が嫌いになる生徒に見られる「2つの予兆」

小学生の時にはそんなに苦手でもなかったのに、中学に入ってからなぜか国語の点数が伸びなくなった…。そんな生徒に見られる二つの予兆があります。それは、
① 文章の内容に興味が持てない
② 記述問題が書けない
これは、中学校の国語が小学校の国語に比べ、急激に難易度が上がることによって起こります。

予兆1「文章の内容に興味が持てない」

興味が持てない理由は、「知識」が足りないから

中学国語の現代文には、評論文、随筆、小説など、小学校では扱わなかったジャンルの文章が登場し、その内容もより「大人の知識」を必要とするものが増えてきます。
「書かれている文章に興味を持てない」のは、そこに書かれてあることに共感したり納得したり、あるいは反対する気持ちなどが起こらないからです。
文章を読んで、その文章に何かしらの感情を抱くには、書かれていることに関するイメージを持たねばなりません。
それがなく、よくわからないことをツラツラと読むだけでは、興味など持てるはずがありません。
つまり、「興味がわかない」のは、その文章に関するこれまでの経験や知識が不足しているのです。

「読み解く力」に知識がどれぐらい影響しているのかを示す事例があります。

2010年のセンター試験の国語では、小説の問題に吹奏楽をテーマとした「楽隊のうさぎ」(中沢けい)が出題されました。この問題の正答率に関して、ある傾向がはっきりと表れたのです。

部活動などで、吹奏楽の経験を持っている生徒の方がより正答率が高かったのです。

吹奏楽を経験したことがない生徒には、文章に書かれてある楽器名すらピンとこない。その扱い方や指の動きなどおよそイメージがつかず、いちいち突っかかります。

一方、吹奏楽を経験したことがある生徒なら、文章の大半をすんなりと読むことができ、自分の中にしっかり映像も浮かび上がります。
ですから、たとえば心情理解を問う問題などでも、「明らかに間違っている回答」を見つけるのにはさほど時間がかからないのです。

知識量を増やすには?

では、どうすれば知識を増やせるのでしょう? これはもう、いろんなことを経験したり、あるいは本や新聞を読んだりといった「日常的な学び」を継続するしかありません。

ただし、やみくもに「本を読め、頑張れ!」と言っても、これもまた無理。まずは、興味をあることや好きなことに関する本などから始めてください。

たとえどんなに好きなことであっても、必ず「未知」には出会います。好きなことならその未知を調べることにも喜びを感じます。調べればまたさらなる未知に出会います。
こうして出会った「未知」を「既知」に変え、蓄積していくことで知識量を増やしていくのです。
一つずつしっかりと。遠回りのように思えても、結果的にはそれが一番の近道です。

予兆2「記述問題が書けない」

記述問題が書けないのは、文章の「型」を知らないから

もう一つ、小学校から中学校になって大きく変わるポイントがあります。
それは、記述問題」が増えることです。よく出る記述問題は、概ね次の4つに分類されます。

【よく出る記述問題4パターン】

番号 記述問題の
パターン
傍線部を言い換える記述問題 傍線部の「AIによる社会の目まぐるしい変化」とは、どんな変化を指しているか?
理由や根拠を示す記述問題 筆者は、社会が目まぐるしく変化する理由は何だと考えているか?
登場人物や筆者の
心情を推測する記述問題
「テスト結果は85点だった。〇〇さんは唇をかみしめた。」この時の心情は?
書かれている文章の
要旨をまとめる記述問題
この文章を通じて、筆者が読者に最も伝えたいことを100文字以内でまとめなさい

記述の「型=答え方・書き方のルール」を知る

中学の場合、いずれの記述問題も80~100字程度、つまり1文か2文まででまとめる問題がほとんどです。ということは、「型」を覚えておけば、的外れな文章を書くことはないのです。

ここでいう「型」とは、「答え方・書き方のルール」です。たとえば、傍線部の言い換え問題なら、文中のどこかに必ず「別の言い方で表現している文章」があるはずです。
それを適切に見つけ出して書く。あるいは、理由や根拠が問われているなら、回答文の最後は必ず「‥‥だから」という語句で終わるはすです。

つまり、「問われていることは何かを見極めて、ルールに従って書く」ことが大切です。

また、心情推測問題などでは、文中に示された事実などから論理的に類推する力も求められます。たとえば、上記の「テスト結果は85点だった。〇〇さんは唇をかみしめた。」の一文。
一般的には、85点なら上出来です。ではなぜ「唇を噛みしめた」のか?
平均点が95点で自分だけ劣って「恥ずかしかった」のか?100点を取るとお母さんと約束して猛勉強したにも関わらず失敗して「自分が情けなかった」のか。あるいは、にやけそうになるほどの「喜びを隠す」ために唇をかみしめたのかもしれません。
どれが正解なのか?類推するための材料は必ず文中にあり、それをもとに正しく推測し、記述していくのです。

そもそも国語力とは段階的に積み上げられる力

ここまでは、中学校になって「つまずきやすいポイント」について解説しましたが、ここからは、そもそも国語力には、どういう力が必要なのか、また、教育指導要領の改訂を踏まえた「中学以降で身につけるべき国語力」について考えます。

小学校以降で身につけるべき「国語力」

下の図は、小学校以降で学ぶべき「国語力」を言語化・視覚化した概念図です。
中学に入ってつまずきやすいポイント(①文章の内容に興味が持てない ②記述問題が書けない)に対しては、「知識を蓄えること」と「文の型を知ること」が重要だと先述しました。
下図に当てはめると、「知識を蓄えること」は最下段の力、「文の型を知ること」は、その上にある「読み解くための基礎力(文章の構造を理解する)」と捉えられます。

【読解力の真の姿(概念図)】

2022年の学習指導要領改訂で強化された「読み解いて推論する力」や「表現し伝える力」

さらに、高校、大学ともなれば、「読み解いて推論する力」や「思考する力」「表現し伝える力」などが求められます。

2022年には、教育指導要領が改訂されました。その新しい教育指導要領の元で学んだ高校生が2025年1月に受けた共通テストでは、国語の試験は大幅な変更が加えられました。
より実用的な文章の大問が新設され、これまで以上に「読み解いて推論する力」や「表現し伝える力」などの言語活動能力が測られるようになったのです。

[関連ページ]共通テスト国語、変更点と対策法

中学までの土台がもろければ、高校受験、大学受験でも苦労する?

これは大学受験に限った話ではなく、その基礎力を養うこととなる中学の国語学習も変化します。

それでなくとも、国語力は、すべての科目の基盤となる能力です。たとえば、数学の文章題一つをとってみても、「問われていることは何か?」がわからなければ、式を立てることもままなりません。

国語力は重層的・相乗的に積み上げていく力だけに、難易度が上がり始める中学校の初っ端で苦手にしてしまうと、この先、国語のみならず、他の科目にも影響が出てしまうのです。そうならない様、今のうちから意識して対策を進めておきましょう。

[関連ページ]「読解力」とは?共通テスト国語、変更点と対策法

中学校で鍛えておくべき国語力と勉強法

では、中学時代に鍛えておくべき国語力とは何で、それを身につけるにはどうすれよいのでしょう? 鍛えるべき力は「知識を蓄える土台づくり」と「読み解くための基礎力(=文章構造の理解)」だと考えます。

知識を蓄える土台づくり -カラーバス効果-

これは、先述のとおり、いろんなことを経験したり、あるいは本や新聞を読んだりといった「日常的な学び」を継続するしかありません。まずは好きなことを入り口にした方が、始めやすく続きやすいでしょう。
学校によっては、社会的なキーワードについてまとめた国語の副読本を配っているところもあります。その中から興味を持てそうなテーマを選ぶのも一つの方法です。

ところで、「カラーバス効果」をという言葉をご存知ですか?

カラーバス効果とは、「あること」を一度意識してしまうと、自然とそのことに関する情報が目に入ってくるようになる現象のことです。
「color(色)」を「bath(浴びる)」から成り立つ「色の認知」に関する言葉ですが、色に限らず、社会的な話題、研究や学び、商品やモノなど、あらゆることに対して起こります。

大切なのは、一度でいいから「コレはどういうことなんだ?」と疑問に感じること。そしてそれを意識しておくこと。そうすれば、テレビや映画を見ている時でも、あるいは電車や街角の広告の中からでも、それに関する情報があれば無意識に反応するようになります。

それは同時に、興味のアンテナの角度も広げてくれます。仮に好きなことから入ったとしても、気がつけば、最初は関心などなかったことについても興味を感じられるようになるのです。

読み解くための基礎力 -文章の構造を理解する-

文章を読み解くには、知識のほかにもう一つ必要な力があります。それが「文章構造を理解する力」です。

< 文章構造を理解する力とは? >

文章の構造に着目し、文意を正しく把握・理解・予測できる力。たとえば以下のようなことなどができる力です。

  • 主語・述語の関係や、指示代名詞が何を指すのかなどを正しく読み取れる
  • 段落や段落の関係(順接・逆接)などをきちんと判断・把握できる
  • 文章の段落構成や文脈の推移などから、合理的・論理的に展開や結論を推論できる

ここでは、既有知識は「トップダウン処理」、文書構造の理解は「ボトムアップ処理」と呼んでいます。
そしてこの二つの力から生まれるのが「合理的な推論能力」で、これこそ「読解力の真の姿」だと考えています。

【読解力の真の姿(概念図)】

この文章構造を理解する力をつけるには、文章をただ漫然と読まないこと。段落ごとのつながりや展開、接続詞や代名詞を意識しながら、ある程度のスピードを持って読み下せるようになるまで練習することが大切です。

最初は少しもたつくかもしれませんが、訓練して慣れてくれば、無意識にそれができるようになります。

中学生の国語学習で親ができるサポートとは?

家の中に「プチ図書館」を作って、「今月の3冊」を目につくところに置いておく

では、親は子どもに対してどんなサポートができるのでしょう?中学生ともなれば多感な時期。うかつに口出ししたばっかりに、反発されてかえって勉強しなくなった…。そんな相談もよく受けます。

おすすめは、「家の中のプチ図書館」です。

教科に関係すること・しないこと、本のジャンルやテーマは何でもいいのです。単行本・雑誌・新書などの体裁も何でもいい。
子どもが興味を持ちそうな本を月に3冊程度買って、リビングのテレビの横や玄関の下駄箱の上などに置いておく。ただそれだけです。

読まれなくても構いません。自分が読みたいものを買い、読み終えたらそれを置いておくのでもよいのです。子どもも多少は、「お父さんやお母さんはなぜこの本を買ったのだろう?」ぐらいは気にしたりもします。
その興味につられてチラッとナナメ読みぐらいするかもしれません。そうして興味のアンテナの感度を上げ、興味の芽を育てるきっかけを作ればいいのです。

毎日10行ぐらいの文章を「読むだけでいい」ので読ませる

また、親子関係が良好なら、きちんとお互いに合意したうえで、「毎日与えた短文を読ませる」のも良策です。ただし、無理やり押し付けるのは禁物です!

こちらも読むものは何でもいい。天声人語でもいいし、音楽やグルメといった趣味的要素が強い文章でも構いません。全体で50~70行程度の文章を10行程度ずつに5つに分解し、月曜から金曜の間、毎日その10行を読むだけです。

それについて、日々レポートを書くと言った宿題を課す必要もありません。ただ一つだけ、1週間後にすべてを読み終えたところで「今週の文章はどうだった?」と感想を聞いてあげてください。

これは、「毎日何かを読む習慣づくり」と、「文章のつながりを意識する」ことが狙いです。
5分割された文章は、その一つひとつは「1」「2」「3」「4」「5」とバラバラの紙切れで、それを毎日読むのもブツ切れの行為です。
ところが、そんなブツ切れの行為でありながらも、日を重ねるうちにそれらは、「1」、「1+2」「1+2+3」「1+2+3+4」「1+2+3+4+5」と連続性・物語性を持った「読書」に変わっていきます。
明日はどうなるのか、そういえば昨日はどんな内容だったのか、金曜にはどんな結末を迎えるのか?そんなことも想像するかもしれません。

これこそが、文章を読み解いていくうえで書かせない「文章のつながりを意識する」という基礎訓練になるのです。

国語は、勉強すれば必ず成績が上がる教科

必ず一生役立つ力になる!だからこそ中学国語をしっかりと!

これだけはどうしてもお伝えしておきたいことがあります。

「国語は苦手」という人は、実は「苦手」なのではありません。得点できるレベルまでの勉強をしていないだけです。

客観的に普段の勉強を振り返ってみてください。英語や数学の勉強同様に、国語の勉強時間を確保していますか?ほとんどの人が「No」で、多くても3分の1程度の時間、ともすれば10分の1程度かもしれません。国語には時間を割きづらいのはなぜでしょう?

それは「日本語を話せるだけは話せ、日常生活だけならさほど苦労しない」から。つまり勉強せねばならない必然性を感じにくいからです。

一方で、受験や社会に出て仕事をしていくうえで必要になるのは、「日常会話力」ではありません。
論理的な推論能力(読解力)や、高度に思索するための語彙力や知識量、さらにはそれらを駆使して第三者に伝えるための表現力や対話・会話力などなのです。これはやはりきちんと訓練されていなければ身につきません。

裏返していえば、日本語が話せる人なら、トレーニングさえすればそうした力も必ず強化されます。
しかもそれは、一度身につけば社会に出て仕事をするうえでも必ず役立つ一生ものの財産になるのです。その基礎を鍛えるのが中学の国語です。

まずは、英語や数学と同様・同量に勉強する覚悟が持つことから始めましょう。

国語力を鍛える、塾の上手な選び方と活用法

最後に、国語力を鍛えるために、塾を活用することも有効です。
集団塾と個別指導塾、どちらもそれぞれのメリットがあります。お子さまの目的や性格に合わせて、上手に活用しましょう。

集団塾の良さ:ものの見方や思考の切り口が広がり、伝える力も鍛えられる点

集合塾で国語を学ぶメリットは、「自分とは異なるものの見方や意見を聞ける」ことです。心情推測問題にしても、要旨・要約をまとめる問題にしても、クラスの全員の意見が一致することはありません。
他の生徒はなぜその結論に至ったのか、そのプロセスを追うことは、自分が持ち得なかった思考プロセスを疑似体験することになります。それだけものの見方や思考の切り口が広がります。

また、それについて議論する機会があれば、「自分の考えを周囲にわかりやすく適切に伝える」という言語表現の訓練にもなります。これはまさに新しい学習指導要領が強く求めている言語能力です。

ただし集団塾では、一人ひとりの生徒が持つ知識量や文章構造の理解度にギャップがあったとしても、それをチューニングしたりフォローしたりすることはできません。一定レベル以上の力を持っていることが前提となります。

個別指導塾の良さ:生徒のレベルの見極めと、レベルに応じた適切な指導

一方の個別指導塾の良さは、言うまでもなく、集団塾だとカバーしきれない「その生徒の今のレベルに合わせた指導が受けられる」ことです。

特に、文章構造の理解度は、生徒によってばらつきがあります。実はこれは、すでにある程度到達しているなら、追加で強化してもさらなる効果はさほど期待できません。
一方で、まだ理解できていない生徒は、強化すれば相応の効果があります。少なくとも、一定レベルに達するまでは勉強させた方がいい。そのレベルの見極めとレベルに応じた指導ができるのは個別指導だからこそ、です。

また、知識は一朝一夕につきません。その土台づくり・習慣づくりがしやすいのも個別指導のメリットです。多くの塾では、それぞれの生徒の興味・関心に寄り添いながら、「コレって何だろう?もっと調べてみたい!」といった「興味の芽」を育てることに注力しています。

いかがでしたか?
たかが国語という意識を変えて、社会に出てからも必ず役立つ、一生ものの国語力を今のうちから身につけていきましょう。

\ アクシスは、全国500校超 /

お近くの校舎へお気軽にお越しください。

この記事を書いた人

(株)ワオ・コーポレーション
能開センター 大学受験コース
オンラインゼミ 国語スーパー講師
森野 知生(もりの ともき)